丹羽仁美のアイドル道と人生観
1. 序文
あなたは『アイドルマスター シンデレラガールズ』の丹羽仁美というアイドルをご存知だろうか。
彼女の趣味は、史跡巡りと武将グッズ収集。イケメンだと思う城は鶴ヶ城(=会津若松城)で、一緒に戦場で戦いたいというほど憧れている戦国武将は、天下の傾奇者と謳われた前田慶次郎利益(=前田慶次)。
いわゆる歴女な女の子であるが、その実は、日本史に詳しいわけではなく興味があるものにとことん惹かれているだけ。前田慶次のことも、好きだから好き。生き様が好き。"歴史"よりも人物重視なのだ。
「仁美ちゃん、浅井長政について役作りのために教えてくれる?」
「長政? 浅井長政かぁ……んーそんなに好きじゃないな」
「いや!好きか嫌いかじゃなくて!」
「興味ない武将はそんなに知識持ってないってコトだよー」
逆に言えば、興味のないものには興味がないと断言する子でもある。Likeが100ならDislikeは0というような、趣向が明確な女の子なのである。
この文章では、そんな彼女の本当に奥深い「好きなこと」に対する考え方を論じていこうと思う。
2. 丹羽仁美のアイドルになったきっかけ
2-1. 時代劇をやりたい女の子
そもそも彼女の初登場となったのはmobage版シンデレラガールズ(以降モバマス)のお仕事で進めていくエリアのうち「名古屋エリア」でその場所のボスとして登場。同じく名古屋エリアで登場したアイドルには「橘ありす」「森久保乃々」「片桐早苗」がいる。
モバマスではエリアクリアした際に倒した相手のアイドルを自身の事務所へ引き込むことができるシステムということもあり、そこで初めて丹羽仁美は自分たちのプロダクションへ所属するアイドルとなる。
一方、スターライトステージ(以降デレステ)の方ではどうかというと、友人と時代劇に遊びに来ていたところをプロデューサー(自分)に「時代劇にも出られる」とスカウトされアイドルになるという詳しい描写がされた。いわゆるこういったスカウトされる際の状況、設定などはユーザーの想像にお任せするという風潮があり、デレステの描写はあくまで公式から提示された一例に過ぎないということを念頭に入れてもらいたい。どういった形で彼女があなたの事務所のアイドルになったかはあなたの世界で描いてもらっていいのだ。
しかしその上で忘れてはいけないのが、彼女は「時代劇に出ること」がアイドルをする上での根底にあるということだ。
趣味が趣味だけに、やはり彼女は時代劇にとても関心があるようだ。
劇場225話"艶やか!仁美姫"
SR[大傾奇娘]のカードの"シンデレラ劇場"では、宝塚やオペラ歌劇を嗜んでいるアイドル仲間の西川保奈美に「演技派ね」と称賛されるほどの演技力を見せた。もともとノリの良い性格ゆえの面白ムーヴなだけだったりもするかもしれないが。
ところで、彼女がアイドルになって時代劇に出ることの真の目的は、憧れの前田慶次のように敵をばっさばっさとなぎ倒していく殺陣を盛り込んだアクション時代劇の主役を演じること。上の保奈美のセリフにもあるが、仁美本人は姫よりも武将を演じることを目標にしているのだ。
2-2. アイマスの「食い違い」要素
そしてここにはアイマスの常、いわゆる「食い違い」の要素が組み込まれている。
仁美はシンデレラガールズに登場して今もなお、そういった時代劇の主役を演じたことはない。そればかりか他のアイドルがこぞって時代劇の公演を行っている。その時、仁美はその公演の出演者ではなく見学者という立場であった。
アイマスの「食い違い」という要素は、例を挙げて説明すると、菊地真の「きゃぴきゃぴるんな衣装を着たい」というのに対して本人のルックスを考慮した男性的なカッコいい衣装を着てステージに立ったりだとか、豊川風花の「清純派アイドルになりたい」という願いに対してセクシーな水着やグラビアの仕事をさせてみたりだとか、こういった本人の望みとプロデュースが食い違いを起こす要素のことである。
これは決してネガティブなものなどではなく、本人は自分の魅力はコレだと思っていても、第三者から見ればそうではなく、他に飛び出た何かを持っているアイドルがこの要素に引っかかる。つまりプロデューサーがそのアイドルの真の魅力を引き出し、それをアイドルとしての個性に昇華させているのだ。
菊地真はカッコいい衣装が似合うし、豊川風花はセクシーなスタイルが似合う。
こういった要素、系譜がアイマスには必ず存在する。そして丹羽仁美もこの要素に当てはまるアイドルだと言える。
3. 丹羽仁美はキュート属性のアイドル
3-1. 笑顔の変化
最初に提言してしまうと、丹羽仁美のアイドルとして最大の個性は『可愛くて面白くて、好きなことに一途な和風アイドル』だ。
丹羽仁美の最初期のカードと、最新のカードを比べてみると分かることがある。
まず顔が違う。これを「単純に絵師が描き方を変えた、上手くなっただけだ」というのを除外してあくまで「丹羽仁美の変化」と考えると、最近はとても垢抜けた可愛らしい顔をしている。初期の顔はアイドルになったばかりで、とりあえず好きなものを身につけてみたオタク少女という印象だ。
彼女はアイドルになって、可愛くなったのである。
最初期のカードと最新のカードだけというのではなく、実装順にカードを見ていっても同じことが言えるだろうと思う。彼女は徐々に最近に近づく度に、笑顔が変わっていっているのだ。それも可愛い方へ。
3-2. 笑い方の変化
続いて彼女は、その笑い方もアイドルになって時間がたつにつれて変化していっていることを紹介したいと思う。
このように初期では「おほっ!」だとか「うひ!」という笑い方をしていた彼女だったが、最近の笑い方はどうかというと……。
劇場868話"勉強の成果!"
彼女は少しずつ「あははっ!」と笑うようになったのだ。これは最初期のカードのニヤッとした笑顔から出る笑い声ではないと分かる。最近の笑顔に近い顔で発せられる笑い方なのだ。
ノリの良い性格ゆえ、時代劇風に「ふっふっふ」や「はっはっは」などの笑い方もするがそれはあくまで笑っている人の真似。彼女が本心から笑う時、彼女は「あははっ!」と笑うようになったのだ。
3-3. "笑顔"がテーマのキュート属性アイドル
つまり彼女は、アイドルになって笑顔も笑い方も変わっていったのだ。
それが何を理由にするかは作品内で明確に描写されてはいないが、彼女を担当するいちPとしての解釈を述べるとするならば、丹羽仁美は可愛い路線で売れると思ったプロデューサー(自分)が、可愛い笑顔の方法を彼女に教え、彼女はそれを身につけていったというものである。
シンデレラガールズのキュートアイドルには、いわゆる"笑顔"がテーマのアイドルがいる。島村卯月、関裕美がそれに当たる。彼女たちは自分には何もない……と思いながらもプロデューサーが笑顔を勧めることでそれを武器としていったアイドルたちである。私は、丹羽仁美も彼女たちと括りで言えば同じ位置に値するのではないかと思うのである。
丹羽仁美もまた、"笑顔"がテーマのアイドルなのだ。
それゆえに彼女は3属性の内『キュート』のアイドルであり、その笑顔の変化が時間によって描写された希少な例であるとも言える。
4. 丹羽仁美の「好きなこと」への考え方
4-1. プロデューサーへの信頼
彼女は、戦国武将が好きな女の子である。中でも好きな戦国武将は前田慶次であり、彼の己を貫く姿勢と生き様に惚れている。
その自分の好きなことを他の人へも共有したいと考えるのは人の常であり、彼女のまた誰かに戦国武将や日本史のことを布教したいと思っている。が、彼女の布教がきっかけで日本史好きになった周囲の人間は誰もいない。
当然彼女は、プロデューサーであるユーザーにも戦国武将に興味がないかどうかと訊いてくる。特定のプロデューサーはそういうことが好きな方もおられるだろうが、大抵の方は正直そこまで詳しいわけではないと思われる。
ところで彼女は、プロデューサーである自分たちのことを信頼できる相棒、慶次にとっての松風、真田幸村だと言ってくれるほどの信頼を寄せてくれている。しかしプロデューサーは彼女の布教する戦国武将のことなどに特に興味はないという姿勢。
丹羽仁美という女の子がそのことに対してどう思っているのか、それがデレステのとあるコミュで描かれている。
どんなに布教したって、話している相手がそのことに興味を持ってくれるとは限らない。好きなことを共有するというのはそれだけ難しいことなんだと彼女は知っており、それでもプロデューサーが話を聞いてくれることを「嬉しい」とまで言う。
彼女のプロデューサーへの信頼は「それでも聞いてくれる」姿勢が根底に来ているのだ。
彼女自身は「興味のないことは興味がない」という考えの持ち主なのであるのに対し、プロデューサーは「それでも聞く」という姿勢なのだ。つまり仁美は仁美なりに、こちらのことを尊敬してくれているというのがここでは描かれている。
例えば信頼を寄せあっている、仲が良いというのは、決して同じような人間である2人が築く関係性ではない。互いに違うものをそれぞれ持っていて、それを互いに理解し支えあっていける関係性のことをそういうのだと私は思うのだ。
4-2. 「好きなこと」への姿勢
日本史に詳しくないし、興味のない武将のことはそこまで知らないというスタンスの彼女だが、彼女が前田慶次のことを愛している大きな理由のひとつは、周りに流されず己の「傾き」や「意地」を貫き通すという生き様だ。
彼のことをそんな人物だと敬愛し、好きになった。そこから彼の歴史を知り、周囲の歴史も少しずつ知って、彼女の若干歴女属性を作り上げている。
彼女もまた憧れの慶次のように、周りに流されず自分の「好き」を決して曲げずに貫き通すという強みがあるアイドルだ。周りに何を言われようとも、関係ない。
ところで彼女は18歳の高校3年生だが、貫き通す己を持っているところがとてつもなく立派だと思わないだろうか。私個人が彼女を応援したい、好きになった理由の全てが彼女のそういう部分である。
好きなことへの一途さ。これは丹羽仁美というアイドルが持つ強い武器なのだ。
いざ我々が「好きなことへ一途になろう」と言っても、よほど強い意思を持っていないと叶わないのが常だと思われる。これを読んで下さるあなたも、今までに色んな「好き」を経て、通り過ぎてきて、今現在のあなたへ行きついているはずだからだ。前はこんなゲームに狂ったように時間を費やしていたが、今はもう触れもしないというものがあなたにも無いだろうか。担当アイドルが複数いるプロデューサーの方も、それに当たる。
丹羽仁美のそういう好きなことへの姿勢には尊敬の念を抱かざるを得ない。
4-3. 丹羽仁美から学ぶ「推し」への姿勢
推しやファンとは何だろうか。その何かに対して、好きだったり応援したいという気持ちがあったりするもののことだろう。人間、誰でも何かしらのそういったものは持っていることと思う。それは特定の人物へ対するものとは限らない。例えばこの芸能人が好き、この歌手が好きというのもそうだし、この音楽ジャンルが好き、この列車が好き、こういうアトラクションが好きというのも同じくそれに当たる。
そういうことへ、果たしてあなたは一途になれているだろうか?
誰かにこう言われて、やっぱりこっちの推しになろうか……アレを好きだなんて周りにおかしいと思われないだろうか……このコンテンツは好きだけど嫌いな演者がいるからダメだ……のような感情。あなたには無いだろうか。
そういう方にこそ、丹羽仁美を好きになって応援してほしいと思う。
私が言いたいのは、そういう根無し草になっているあなたの意思を強くしろという言い分ではない。人間、その場その環境に合わせて趣味趣向も臨機応変に変化させていって生き永らえていく生き物であるからだ。
しかし丹羽仁美という少女は、そうではない。
一つ、凄まじいほどの揺るぎない「好き」を持っており、それは決して曲がらない。我々はその姿勢に対して尊敬していかなければならない。
アイドルマスターというコンテンツに心酔している方々は、少なからず大半の方が「担当アイドル」を持っていると思うが、その担当アイドルへの思いはそれぞれあるだろう。果たして、あなたはそれを未来永劫曲げずに保ち続けられるだろうか。
それは出来ないというあなたの持っていないものを、丹羽仁美は持っている。持っていないものを持っている存在というのは、ときに尊敬に値したり、変わっていると思う。
最後に
彼女のそういうところを、好きになってもらいたい。そういう意味を込めて、私はこの文章を書き出した。
笑顔の変化、好きへの姿勢、尊敬すべき部分――彼女がいつかアイドルマスターというコンテンツの中で、そういった彼女だけの強い個性がフィーチャーされて注目されていくことを切に願う。
そして私個人としてもカバ―曲リクエストで投稿したこの曲で末文とさせて頂きたい。
にしなり